親父の在宅看取り ~その2~
2020年の8月の定期受診で酸素導入となり、在宅酸素療法が始まった。
親父自身、もともと運動神経は良い方なので生活で介助が必要な場面は特になく、介護保険を申請しても非該当になる事は明らかだった。
動作時の呼吸苦は強かったのでシャワーチェアはホームセンターで自費購入した。
入浴や酸素流量、動作注意点などを指導した。
気胸に関しては本人だいぶショックだった様子で、受診前と比べると行動量と行動範囲がガクンと落ちた。
「ガサガサ作業したり、労働に近いことしなくて庭にでてウロウロするくらいはした方が良いよ~」と軽く伝えると、翌週あたりには少し行動範囲が広がってきた。
この点は一見すると身障OTの分野ではあるが、実は精神OTの分野のアプローチが有効と思えた場面で、行動範囲の明確化することで元々の本人の生活パターンに安全と安心を後押ししてあげる声掛けであるとも捉える事ができる。
話を戻そう。
9月の中旬になると、酸素の扱いにもだいぶなれてきた様子で、本人が運転して母を乗せて近くのスーパーまで買い物に行くことも出来るようになった。
普通の医療者の場合だと「危なくない??」と言われそうなのだが、いいのである。
自分の行動範囲は自分で決める。運動負荷や動作遂行に問題があるのならもちろん僕は口を挟むが、脳メタが問題になる場面は一度も見られてない。
「やりたいようにやってもらう。好きにやりたいようにやったらいい」というのが、僕の親父に対するアプローチのテーマである。
これって、最高のQOLアプローチではないか?と思うのだが。
僕は職場でも、基本的に上記のアプローチがメインである。
周りの人間はつべこべ言いたがるが、安全に安心して過ごせる環境と言うのは必ずしも本人がそれを望んでいないこともしばしばある。
イケイケGOGO!のタイプならなおさらだろう。
もし自分が患者だったら「うっせー!邪魔すんな!」って、言いたくなりませんか?
話を戻しますが、
僕の親父の場合は、そういう生活パターンが「親父らしい」のです。
個人的には車に乗って、近くの海に行って、海を眺めて、釣りしている人のバケツの中身を見て回る、という行動パターンが親父にはあるのですが、それは在宅酸素導入してからはまだ出来ていないようです。
毎日海に行っていたんだけどなあ。前は。
人って、行動する時、何かしらの意味がだいたいの場合あると思うんです。
親父が毎日行っていた海は、昔、親父が毎日釣りをしていた海です。
2時間位で土嚢袋2袋いっぱいになるほど釣れていた海です。
でも、もう何十年も釣りをしていません。
なぜでしょう?
すべてではありませんが、
一つの理由としては海が汚れたからと思います。
昔は(35年くらい前)そこで釣った魚は美味しく食べられました。
でも、今は工場が新しく出来て、とても食べたいと思う魚は釣れなくなりました。
親父にとっては昔から馴染みのある場所です。なので、気になる場所でもあると思います。
親父が小さい頃はその海はもっとキレイだったそうです。
人の行動には意味があると思います。
もしかしたらその場所に行くことで過去と現在の照らし合わせだったり、あるいは未来の予測なのかもしれません。
人は懐かしい場所を訪れる時、過去と現在を重ねる作業を無意識にしていることが良くあります。
親父の場合、その海は親父にとっていろんな事を重ねて考えることの出来る場所なのかもしれません。
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